イメージと違った牛田智大さん

シェアする

以前トピックスに書いた「YouTubeで堪能 ショパンコンクール!」「ショパンコンクール・アフター??」に続き、今月「牛田智大さんのコンサート」に到着。ピアノ仲間がチケットを取ってくれたのです。感謝感激。
海老名市文化会館の企画で、入場料A席1,500円(S席とれず)。約1,000人収容の大ホールは満席でした。

私が今まで牛田さんに持っていたイメージはポスターそのまま、幼少期の愛くるしい容姿と、明るく陰りのない演奏、クラシック界のアイドルスター。
ところが今日のコンサートは全く違っていました。

ノクターンの最初の一音の、天から降りてくるような厳かな弱音の連なり。くぐもっていて、繊細で、陰影があって、寂しさ・はかなさが漂います。
ショパンコンクールの報告や感想といった話もなく、まるで鎮魂のコンサートのような、自分のことを語らない演奏でした。

あれ?気持ちが沈んでいるのかな?…。
(勝手に)直感が働きました。『彼はロシアのウクライナ侵攻を憂いているに違いない。』

直感は的中したようで、アンコールの前に初めてトークが入りその話をされました。もはやショパンコンクールのステージは、遠い昔の出来事になっているのではないでしょうか。

今回のプログラムは昨年11月に組んだものだそうですが、偶然、ショパンが祖国ポーランドを思って書いたマズルカやポロネーズで占められていました。

「東欧で起きた政治的な出来事と音楽は別ではあるけれど、今自分にできることをして、たくさんの方とその思いを共有したい。」と慎重に言葉を選びながら、切々と語りました。

アンコールで弾いた葬送行進曲(ショパン ソナタ第2番より第3楽章)は低音部がB(シ♭)とDes(レ♭)の繰り返しで曲が進行します。牛田さんによるとBはBirth、DesはDeathという解釈があるとのこと。生と死。最後はBで終わるから、生きるというメッセージ…と話されていました。

ウクライナはホロヴィッツ、ブーニンの祖父ネイガウス、その弟子リヒテルの故郷。

1日も早い停戦を心から願っています。