先月のことですが、姪の妹の方が声楽の友人とともに、3回目となる「絵本の朗読と歌とピアノのコンサート」を開催するというので、聴きに行ってきました。
この催しは、街の活性化事業を行うNPO団体から依頼を受けて企画されたそうです。
会場は汐留イタリア街にある富士ソフト汐留ビル1Fレセプションホールでした。企業のロビーを利用した空間で、天井が高く響きも良く、椅子に腰かけてゆったりと朗読と音楽を楽しめる雰囲気がありました。
プログラムは、展示されていたイタリア絵本の中から姪たちが選んだ
- レオ・レオニ『じぶんだけのいろ』
- キアーラ・ロッサーニ『ミケランジェロ〜石に命をふきこんだ天才』
- イタリアのむかしばなし『梨の子ペリーナ』
の3冊です。朗読と音楽が組み合わさり、物語の世界が自然と広がっていくようでした。
イタリア絵本の豊かで繊細な色彩は、スライドに映されるとまるでアート作品のようでした。特に、ミケランジェロの人生を自分語りで描いた絵本には強く心を動かされました。
彼はルネサンス期に常に注文制作に追われ、財を成しても使うこともなく、興味も示さなかったそうです。システィナ礼拝堂の天井画を依頼されたときも「自分は彫刻家だから絵は不得意だ」と悩み、制作が進まなかったといいます。けれど夢の中で「彫刻のように絵を描けばいい」と啓示を受け、そこから4年間、一人で『天地創造』を描き続けたそうです。
完成後、その壮麗な天井画をひと目見ようと人々が押しかけるなか、本人は粗末な自宅で疲れ果て眠り続けていた――そのエピソードには胸が詰まる思いがしました。
朗読に合わせて演奏された音楽もまた格別でした。ピアノはレスピーギ編曲《リュートのための古風なアリア》から数曲、声楽はチマーラやペルゴレージ、さらにフォーレ《レクイエム》からの一曲など。格調高く贅沢な響きに、耳も心も存分に満たされました。
ミケランジェロのように芸術を極める人は、すべてを犠牲にして孤高の道を歩んでいくのかもしれません。凡人には「ほどほど」や「バランスよく」という生き方しかできませんが、それも妥協ではなく、一つの選択なのだとあらためて思わされました。
音楽の道もまた同じです。子どもの天分を見逃さずに育てていくことが、自分にできる最大の役割だと思います。そしてもし一生のうちに大きな才能との出会いに恵まれたなら、それだけで指導者としてこれ以上ない幸せだと感じます。